浅草の町

Pasted Graphic 27
靴づくりが他のものづくりと違うところのひとつに、一足の靴が出来るまでにとてもたくさんの材料を使うことがあります。
アッパーの革や底材として使う革やゴム・スポンジと、金具や糸・紐・マジックテープなどの他に、外からは見えない部分に必要な中底やシャンク・コルクなどなどたくさんの素材が必要で、それらの資材は月に1回ほど浅草へ出向き仕入れてきます。いつも使っている接着剤などは電話で注文して配送してもらってますが、革はもちろん目で見て購入したいものがほとんどで先日も横浜から浅草へ行ってきました。

靴づくりをはじめたばかりで右も左も分からない頃、問屋さんに行っては冷たく(?)あしらわれ、「そんなものは置いてない」とよく言われたものですが、何度も何度も足を運ぶうちに、
一見、下町のつっけんどんな感じのおじさん達にも狼狽えずに話してみると、とても親切でお話好きで、
「横浜からよく来てるねー」とか
「暑い中ご苦労さま。」とか
「新しい素材が入ったよ。」とか
「お嬢さんにちょうどいい道具が入ってるよ。」だとか
一軒一軒、ただ購入するだけでなく話が弾み、毎回、靴づくりに関する情報などいろいろと収穫もあるものです。私のような個人にも細かな注文や相談にものっていただけるお店も多く、温かい人のたくさんいる町です。

横浜にも昔は10軒近く靴の材料屋さんがあったそうですが、大量生産とともに、国産品が減り、靴職人も減ったことで、今では日ノ出町にある1軒ぐらいになってしまったようです。
ここ数年で、大切な靴づくりの道具のワニやキヤスリなどをつくる職人さんも高齢になり、日本の土地で、日本人の手によって、日本の職人のためにつくられた、使いやすい道具は浅草でも手に入れるのが困難になってきている状態ですので、今ある私の手に馴染んだ道具や職人さんから受け継いだ道具を大切に、長く使い続けたいと思います。

浅草からの帰りには、お世話になったモゲさんのところへ、ご無沙汰してしまったご挨拶と木型の注文をお願いしてきました。モゲさんは健康的に少し痩せられた様子で元気そうでしたし、近況報告もでき、ワークショップも変わらない様子でした。久しぶりの訪問でしたので、5年間過ごした日々が懐かしく感じられました。

写真はスエードのトートバック、こしらえました。
秋になったら使ってくださいね。