壊れたワニ

Pasted Graphic 149Pasted Graphic 150
年末、靴作りにとっても大切な道具であるワニを、不注意で壊してしまいました。
忘れもしない、雨で風も強い日でした。片付けをしている最中、突風が吹いた瞬間、気を取られ道具の入ったカゴ丸ごとコンクリートの床にぶちまけてしまいました。壊れていないかひとつひとつ道具を確認して、最後にとった私専用のワニの口先1cm程がかけているじゃないですか。

泣きました。久しぶりに。大人泣き。
今までの靴作りの人生が走馬灯のように思い出され、言葉を失いました。
というのも、この道具を日本で作っている職人さんがもういないので、買えないんです。さらにひとつひとつ形も違うし握り具合とか摘み具合など千差万別で手慣れたワニがあると他のはどうも使いにくくてしょうがないんです。なんとか靴作り仲間やお世話になっている職人さんに聞き、道具屋さんにも聞きました。どのお店も、「今は作る人がいないから無理」とのこと。
昔は目立ての職人さんまでいたぐらいなのに今では修理はほとんど出来ないそうです。
あきらめかけていた頃、浅草の一軒の道具屋さんが溶接を引き受けてくれ、お願いすることができました。一番左がその『Myワニ』です。早速つり込みをして、普通に使う事が出来ました。
助けてくださったみなさんに感謝です。
これからは本当に気をつけます!

横浜では何軒かあった靴の資材屋さんは今では1軒。木のヒールを作っている専門の工場まであったそうです。浅草まで行かなくても横浜で何でも揃った時代があったなんて考えられませんが、これからは浅草でも手に入らない物まで出て来るかもしれません。靴作りを続けている一人として、既成靴製造に関わる雇用の問題が騒がれる中、日本の靴産業も淘汰してこれからを考えていかなければならないなと思いました。